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オルタナティブ提言の会

資料:どのようなオルタナティブ提言を作成するのか(メモ) 
2010年2月6日
白川真澄

[昨年6月6日のオルタ提言の会の立ち上げのときに「オルタナティブの討論を進めるために」というレジュメを提出しましたが、その後の討論を踏まえて提言作成についてのメモを作ってみました。会で出されたペーパーと議事録をすべて読み返す時間がなかったので、重要なことが抜け落ちていると思いますが、とりあえず討議のたたき台としてお読みください]

? オルタナティブ提言の必要性の再確認
*世界的には、米国の軍事的・金融的覇権の凋落後の過渡期の混迷――世界的な金融規制や地球温暖化対策の足踏み、「核なき世界』論とアフガンへの増派。

*日本での政権交代の実現――新しい政治的空間の出現、アジェンダ(社会や国家のあり方をめぐってすべての勢力が本格的に争う争点・課題)の設定とアリーナの創出。

*民主党政権の迷走とすべての課題での中途半端さ――対等な日米関係への転換(沖縄の基地問題)、新自由主義との訣別(社会保障・雇用政策、経済政策)、右翼ナショナリズム潮流との対決(外国人参政権問題)。

*民主党政権には原則・理念にもとづく社会ビジョンが不在――自民党も不確定。

? 提言の基本性格をどう定めるか

*日本社会の変革は世界やアジアの変革の一環として実現されるが、世界やアジアの変革に有機的に結びつく展望を持って、さしあたり日本社会の現実から出発して日本社会をこのように変えたいというオルタナティブを提言する。

*オルタナティブな社会を実現する主体は、日本列島に住むすべての人びと、日本に暮らすすべての人びと(「日本国民」に限られない)。

*原理・理念の宣言だけでも、実現可能な制度・政策の羅列だけでもない。原理・理念のレベルと制度・政策提案のレベルを結びつける提言とする。

*提言の魅力(「売り」)を何に置くか。

*誰に向かって提言を出すのか――何よりも、社会運動に携わっている人びと。しかし、日本社会のあり方に根本的な疑問や批判をもっているすべての人びとにも。

*現状の批判的分析を含めた(議論できていない項目も入れた)包括的な提言にするか、主要な項目だけに絞った提言にするか。

※これまでに議論したテーマ
 (1)労働と雇用(7月20日、8月30日)、(2)農業と地域社会(10月11日)、(3)グローバル資本主義への対抗(11月15日)、(4)日米関係のオルタナティブと東北アジアの平和構想(12月26日)、(5)ジェンダー視点からのオルタナティブ(2月6日)

? 提言に何を書きこむか

A 日本社会の何を根本的に変えるのか

*アジアとの歪んだ関係(植民地支配の歴史の隠し持ち、戦争責任の未解決、市場としてのアジア)。

*依存・従属の日米関係(対米協調なしにやっていけないという神話の支配)。

*戦前から引きずってきた要素の強い規定力(天皇制、右翼ナショナリズム)。

*人権の侵害、民主主義の空洞化と分権・自治の未熟さ。

*差別と分断の社会(ジェンダー、先住民、在日外国人、障がい者、性的マイノリティなど)。

*グローバリゼーションと直結する輸出依存・成長優先の経済システムとその行き詰まり。

*格差と貧困の増大(企業社会的統合の終焉と公的な生活保障の貧しさ)。

*生きづらさの社会全体への広がり(人間関係の解体、孤立化の進行)。

*対抗力はどこに育っているか(反貧困運動、沖縄の運動、地域再生の運動など)。

B 提言の項目

1 多様な生が連帯し、マイノリティが自由に生きられる社会へ

*先住民(アイヌ、沖縄)の自治と権利、在日外国人・移住労働者の権利(独自の文化を発展させる権利を含む)の確立。
*セクシュアルマイノリティの自由の権利の確立。
*社会的マイノリティ(障がい者、難病患者など)の当事者としての決定権の確立。
*子どもに当事者としての発言権の保障。
*多様な生、自由な生き方とその基礎としての生存権の社会的保障

2 日米関係の転換と東アジアの平和の実現
*非軍事化:日米安保の解消と日米平和友好条約の締結。自衛隊の解体。
*東北アジアの非核・非軍事化。北朝鮮との国交回復(人の自由往来による拉致問題の解決)
*民衆レベルの草の根の交流と協力による平和と安全の実現。
*植民地支配の歴史的清算、戦争責任・戦後責任の実行。

3 人権と民主主義の実質化
*公権力による個人の自由の制限の撤廃/監視カメラ、「安全・安心の町づくり」条例(相互監視と「不審者」通報の奨励)、ネット上の言論規制の撤廃。警察による自白強要の取り調べの禁止。日の丸・君が代の強制の禁止。
*情報公開の徹底による公権力への監視。
*国際的な人権保障条約のすべての批准。
*討議民主主義と市民参加による自治・分権の確立。
*定住外国人の地方参政権の確立。
*政党(とくに大政党)優位の選挙制度の改革。

4 雇用の保障と働き方の転換
*働きたい人すべてに人間らしい働き方と雇用の機会を保障/「使い捨て」労働(登録型派遣など)の禁止。正規雇用化よりも同一労働・同一賃金(同一価値労働・同一賃金)原則に立つ均等待遇の実現。ワークシェアリング。失業時の生活保障。
*社会的に害を及ぼす労働を拒否し、有意味な労働を選ぶ権利と仕組みの確立。
*賃金労働を短縮し、生活の一部に埋め込む/労働時間の抜本的な短縮。労働なしの所得保障。非市場的な活動の正当な評価と拡大。
*女性、非正規雇用労働者、外国人労働者に対する差別的待遇の禁止。
*移住労働者の権利の保障。

5 生存権と生活の保障
*生存権の普遍性。
*貧困率を半減する目標の設定と貧困対策。
*ベーシック・インカムの導入(さまざまの所得保障の一元化)。
*医療・介護・子育て・教育・住まい(現物サービス)を無料の公共サービスとして保障。
*税のあり方の変革/所得再分配の強化。累進所得税・相続税・金融課税の強化、環境税の導入。軍事費や公共事業費の削減。
*社会保障の費用の私的負担の軽減と公的負担の引き上げ。
*民衆の自主的な助け合いの仕組みや事業の発展。
*生存権保障の国際的な仕組み/南の国や被災国への援助のあり方。社会保険のポータブル化。

6 脱成長の経済への転換
*自動車・電気製品の輸出と引き換えに大量の資源・食料・日用品を安く輸入する経済のあり方の転換。経済成長を目標にしない。
*農業の再生と地域社会の再建。信頼にもとづく生産者と消費者の公正で安全な取引(「国内版フェアトレード」)の仕組みの形成。
*エコロジカルな経済と生活/クルマ社会からの脱却。分散型再生エネルギーの普及。CO2排出量の半減。大都市のあり方の変革。
*医療・介護・子育て・教育など対人サービスの拡充とその分野での雇用拡大。
*金融経済の縮小と社会的規制/高リスクの金融商品の禁止。地域から集めた資金は地域へ。金融機関の利益の制限。
*協同組合方式の事業と働き方の発展。

7 グローバリゼーションとの対抗・規制
*農産物の輸入自由化とマネーの自由な移動の制限/WTOに代わる貿易ルールの策定。金融取引への国際課税。ヘッジファンドの禁止、タックスヘイブンの閉鎖、レバレッジの制限など。
*ヒトの移動の自由化/外国人に対する「国民」と対等な市民権の保障。
*世界的な労働条件の切り下げ競争(「底辺への競争」)を制限する仕組み。

8 すべての分野でジェンダー平等の実現。
*女性に対する日常的な暴力の根絶と非軍事化。
*労働の場での「男なみ」化でない平等の実現。
*世帯主義から個人を単位とする社会システムへ/事実婚やシングルへの差別の撤廃。専業主婦優遇の税制や年金制度の廃止。
*政策決定の場への女性の参加、当事者としての決定権の確立。

? 提言作成の作業をどう進めるか
1 単一の提言にまとめることへの疑問(小倉意見)をどう考えるか――共同の提言プラス1人1人の提言にする? それぞれの項目について異なる見解・提言を併記する?
2 提言に何を書きこむか(骨格と項目)について議論する/2月中。
3 提言の草案(たたき台)の作成/3月中。作成チームを作る。
4 草案(たたき台)に対する集中的な議論の組織化と成文化/
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